生活習慣の改善でアルツハイマー病の進行が抑制か

今回は生活習慣と認知症についてです。

 

6月7日に「Alzheimer's Research and Therapy」で掲載された研究結果を参考に見て行きましょう。

なんと、生活習慣の改善が認知症やアルツハイマー病の進行に影響を与えることを示した研究は今回が初のようです。

 

さっそく内容を見て行きましょう。

今回の研究は米国の非営利団体である予防医学研究所（Preventive Medicine Research Institute）所長のDean Ornish氏らによって実施されました。

 

試験はランダム化比較試験（RCT）で行われ、健康的な食事、定期的な運動、ストレスマネジメントなどを組み合わせた生活習慣改善プログラムを受けた患者の約71％で認知症の症状が安定、または薬剤を使わずに改善していた。それに対し、こうした生活習慣の改善を行わなかった対照群では約68％の患者で症状の悪化が認められたといいます。

 

このことから食事や運動などの健康的な生活習慣を組み合わせて取り入れることが、軽度認知障害（MCI）や初期の認知症の患者の認知機能維持に役立つことが示されました。

「認知症」、という言葉自体は聞いたことがある方は多いかと思いますが、

いま一度どんな病気なのか少し具体的に見て行きましょう。

 

そもそも認知症とは、

「さまざまな原因で記憶や思考などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすこと」をいいます。

 

そんな認知症にはいくつか種類があります。

 

アルツハイマー型

認知症の最も多い原因疾患。脳内にたまったタンパク質により神経細胞が破壊され、脳に萎縮がおこる。

昔のことはよく覚えていますが、最近のことは忘れてしまいます。軽度の物忘れから 徐々に進行し、やがて時間や場所の感覚がなくなっていきます。

 

脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が送られずに、脳細胞が死んでしまう病気。

高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因です。

 

レビ－小体型認知症

脳内にたまったレビ－小体という特殊なたんぱく質により脳の神経細胞が破壊されおこる病気。

現実にはないものが見える幻視や、手足が震えたり筋肉が固くなるといった症状が現れます。歩幅が小刻みになり、転びやすくなります。

 

前頭側頭葉型認知症

脳の前頭葉や側頭葉で、神経細胞が減少して脳が萎縮する病気。

感情の抑制がきかなくなったり、社会のルールを守れなくなるといったことが起こります。

認知症は一般的には高齢者に多い病気ですが、18歳～64歳で発症する「若年性認知症」も、日本には3.57万人いると推計されています。

※出典：若年性認知症実態調査結果概要｜厚生労働省

 

もし仮に仕事を続けている、家族を支えなければいけない方が認知症になったらどんな影響が生じるのでしょうか。

 

経済的な問題

病気が進むにつれて仕事の上での配慮が多く必要になり、ほとんどの方は収入が減ってしまいます。

また若年性認知症を発症後、2年半後には6割の方が退職しているというデータがあるようです。

 

介護の問題

ご家族の支援も欠かせません。

例えば大黒柱だった父親が認知症を発症した場合、奥さんや子どもが代わって一家を経済的に支えなくてはいけません。同時に父母世代の介護が重なっていれば、奥さんが多重介護の状態に追いやられてしまう可能性もあります。

 

そのほか子どもの教育、奥さんの仕事、家族の健康など様々な影響が予想されます。

※出展：若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について

最後に私の個人的な感想と想いです。

 

今回は生活習慣と認知症についての研究から、そもそも認知症とはについてフォーカスしました。

先述したとおり認知症は高齢者だけでなく、18～64歳の方でも発症のリスクがあります。

 

また若年性認知症の場合の原因疾患の多くは脳血管性認知症です。

この病気は高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因。

 

つまり生活習慣を変えれば認知症になるリスクを１％でも下げることが可能です。

 

だからといって「認知症予防のために若いうちから生活習慣を変えましょう」、とは言いません。

おそらく言ってもイメージできないから。

 

だから、考え方を変えて、

「自分が生涯ずっと大好きなことをやるため、家族に負担をかけないため若いうちから生活習慣の改善に取り組みましょう」

 

理由はなんでもいいです。

この記事を読まれた方が少しでも自身の生活習慣、健康について考えるきっかけとなれば幸いです。

 

当院ではそうした10年、20年先の将来を見据えた健康づくりをサポートしています。

何か少しでも引っかかることがあればいつでもご相談ください。